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除脚・5(「つるべ」の構造)

 腕を持ちあげ空中で止めているとき、自分の中に「ぶら下がっている」感触を感じます。
 その理由について考えてみると、分かってきたことがあります。


 まず、人間の体というものは、すべての場所が何らかの形でつながっています。
 たとえば、骨、皮、筋(すじ)などによってです。

 とうぜん自分の両腕も同様で、仮に感覚がまったく無くなったとしても、重力に任せてだらりと垂れ下がったまま、ちぎれて地面に落ちたりはしません。

 この、体を「つなげている」物理的な構造が、それだけでずいぶんと姿勢や状態の保持に役だってくれているようなのです。

 腕を空中で止めている状態でいえば、腕をその位置に「止めておく」役割を、体の構造や組織の「つながり」が、かなりの部分受け持ってくれているようだ、ということです。



 井戸や舞台の垂れ幕(たれまく)に使用されている「つるべ」の構造は、桶や幕を途中で止めたとしても、綱(つな)やワイヤーを離さなければ下まで落下することはありません。

 そして、その状態を保持するために働いているのは、綱を持っている人だけでなく、組み込まれている綱や滑車といった部品そのものの強度、全体の構造などもふくまれているのです。


 同様に、ひとの体もその構造や(骨や筋などの)素材そのものによって、姿勢や状態の保持がずいぶと助けられているようだ、ということです。
 「(下から)支えている」と感じる筋肉は、常識的な体の使いかたと比べて本来ははるかに必要性が少なく、「むだな力」を抜くほどに、「支(ささ)える筋肉」から優先的に解除されてゆくようなのです。

 そしてそれを突きつめると、やがてほとんど肉体構造だけで保持をする「ぶら下げる」感覚だけが残ります。


 つまり、井戸や垂れ幕を下から誰かが支えなくても空中で止めることができるように、人間の各部位は下から支える筋肉をほとんど使わなくても、姿勢や状態を維持(いじ)できるようだ、ということです。

 井戸の桶や暗幕が空中で止まっているとき、「桶がぶら下がったまま」「幕がたれ下がったまま」と表現しても、「桶が支えられたまま」「幕が支えられたまま」と表現する人はいません。

 仮にそのような表現が使われるとするならば、必要もないのに誰かかわざわざ下から支えている状態なのです。


 必要なのは、桶や幕を「ぶら下げて」止めておく、最低限の力だけです。



 私が甲野先生の「斬落し(きりおとし)」という技を止めたとき、上から来た力を下から受け止めていたわけですから、見かけ上「支えている」と言えます。

 しかし、体の中での使いかたは「ぶら下がって」いました。

 それを見た甲野先生が、「あなたは支えながら、ぶら下がっている」と表現されていたのです。


 (つづく)


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方条遼雨

Author:方条遼雨
■ カルチャー学校講師や身体講座の企画を行っています。 
■ 「動きにおける根本原理の組み替え」に主眼を置いた、【玄運動/玄武術】の概念を提唱し、武術や身体動作を研究しています。 
■ 松聲館・甲野善紀先生、動作術の会・中島章夫先生のアシスタントなども。 
ほびっと村学校講座「りきみをぬく」-日常・運動に役立つ脱力法-講師。

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