【抑制】
「できる」という事と「使う」という事は違います。
人間、高度な技術を習得すると、それを披露したくなる心理が当然働きます。
しかし実際の運用において、「むしろ使わない方がいい」場面が、数多くあるのです。
たとえば演奏技術に定評のある方の楽曲を聞いていて、「むしろここでは技術を抑えた方がいいのに」と思う事があります。
その人が技術を「ひけらかす」事により、全体の調和を乱してしまっているからです。
この問題は、あらゆる分野で起こり得ます。
たとえば私は講習会や動画で速く、大きく、複雑な動きを披露することがあります。
それは、「こんなことも出来るようになりますよ」という「例」を示すためです。
しかし実際の乱取りや戦闘では、その動きは単純なものです。
「相手を制する」という目的の一点において、華やかな動きは大抵「無駄」だからです。
では「複雑・高度な動き」が不要かと言ったら、そうではありません。
「必要な時に、いつでもできる」のが大切なのです。
問題なのは、不要な時に無意識、あるいは意識的にそれを「披露」したくなってしまう事です。
芸術でも武術でも、不要な場面で混入した「高度な技術」は、むしろその質を低下させるという事です。
「増強」よりも、「抑制」の方が難しいのです。
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